独断と偏愛

とにかく現実から目を背けたい20代フリーター

インモラルの限界を超える。金原ひとみ『軽薄』

 

 

 

金原ひとみ『軽薄』

 

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18歳の頃、カナは元恋人に刺されるも一命を取り留めた。29歳の今、仕事も夫と幼い息子との家庭も充実しているが、空虚な傷跡は残ったままだ。その頃、米国から姉一家が帰国しカナは甥の弘斗と再会。19歳になった彼に激しい愛情を寄せられ、一線を越えてしまう。カナに妄執する弘斗は危うげで、そしてある過去を隠していた―。二人を繋いでしまった、それぞれの罪と罰。喪失と再生の純愛小説。

〈BOOKデータベースより〉

 

 

 

 

 

「そんな理不尽な話ってある?」

「理不尽じゃない恋愛なんてある?」

 

 

人妻のカナとその甥である未成年の弘斗の不倫。それぞれの罪と罰

 

 

序盤の、非道徳的ながらも金原ひとみらしい雰囲気から一変、中盤から不信感と狂気の芽がじわじわと顔を出す。

 

終盤は、駆け抜けるようなテンポの良さで一気読み必至。

 

 

 

 

 

温い温いお風呂の中でぼんやりしている内、脳みそが耳から溶け出していくような、そういう侵蝕系の苦しみが、日本の滞在が長くなっていくにつれてどんどん絶え難くなっていく。

この、ガス室に僅かずつガスを送り込まれるような蝕みを体感していると、日本に自殺者が多い理由が何となく分かる気がする。

次第に生きる気力が蝕まれ、そろそろいいかな、とまるでお風呂から上がるかのように一人静かに死んでいく道を選択する人の気持ちが。

 

 

昔の金原作品のような乱雑な感じはなく、むしろ言葉や表現の仕方がどんどん洗礼されていっている。

ベースは変わらないけど少し角が取れたなという印象。

 

 

金原ひとみさんの作品の中ではかなり読みやすい。

 

 

 

 

にしても、相変わらず言葉選びのセンスが絶妙にいい。てかめっちゃ好み。

 

何気ない文章の中に、ズドンと核心をつく一言が隠れているから、本当に怖い。不意打ちで急所を突かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【まとめ】

 

読みやすさ ★★★

言葉選び ★★★

ストーリー ★★☆

変態度 ★★☆

 

総合 ★★★

 

 

 

軽薄 (新潮文庫)

軽薄 (新潮文庫)