無機質な世界と漂う虚無感。森博嗣『スカイ・クロラ』
僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。
〈BOOKデータベースより〉
身体の芯に、電撃が走った一冊。
この世界観がたまらんのです。
頑なに「ボク」の一人称。
「ボク」とは誰なのか。
戦争がショーとして成立する世界に生み出された「商品」としての彼ら。
「生きる」そのものの人間哲学について考えさせられる。
必要のない表現はすべてはぶかれ、必要な表現すらない。
油断していると置いていかれる。
決して読みやすくはないけど、読書慣れしてしていない人でもギリ読めるレベルの難しさ。
僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。その代わり、誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。
繊細で無機質。
そして終始漂う、虚無感。
この世界で唯一発色しているのは、空の青色だけなんだろうなと思う。
洗礼された無駄のない綺麗な文章に、余白が贅沢な、戦闘機のシーン。
文章で酔える。それくらい綺麗。
【まとめ】
読みやすさ ☆☆☆
言葉選び ★★★
ストーリー ★★☆
変態度 ★★☆
総合 ★★★
あ、ちなみにアニメ映画化もしてます。